夏休み最後の夜。
今年も、何事もなく夏休みが終わろうとしている。
海にも行かず、山にも行かず、アミューズメントパークとやらにも行かず…。
思い返せば思い返すほど、何もない…つまらない夏休みだった。
なぁに…どうせどこへ行ったところでカップルだらけだし、人混みも苦手だ。
近場でだらだらと過ごした方が正解に決まってる!
…のはずなのだが、女の子と一緒なら、そんな状況も変わってたんじゃないのか…そんな疑念が頭から離れない。
どんな人込みでも、どんなに甘ったるい場所でも、女の子と2人で行けば楽しく過ごせた…そんな気がする
思い切って誰かを誘ったり、現地調達…とやらに挑戦するべきだっただろうか?
結果はともあれ、何事もない夏休みってのは避けられた気がする。
あ〜あ、今さらだよな。
結局、何にもしなかったんだから仕方ない。
夏休みは終わったんだ。
× × × ×
宿題は7月のうちに終わらせた方がいいとか、
計画的に終わらせろとかよく言われるが、
俺は困ったことに追い込み型だ。
しかも、集中力が続かないタイプ。
今も、さっき父さんがくれたデジカメが気になって仕方がない。
誕生日でもないのに、父さんが俺にこんな高いものをくれるなんて、初めてのことだ。
けど、なんてことはない。
どうしても欲しい新機種が出たので、今使っているのを俺に譲ることをダシに、新機種を買う許可を母さんから取り付けたのだ。
ったく、いいように使ってくれるよ。
…けど、ここは素直に父さんの物欲に感謝しとこう。
旧機種になってしまったとはいえ、手に入れたデジカメは、一眼レフの高いヤツだ。
フツーの高校生に買えるシロモノじゃない。
ずっしりとした手応え、カチリカチリと音を立てて回るダイヤル、スムーズに回るレンズ…。
どれを取っても一級品だ。高級感にあふれている。
俺は、いわゆるデジモノと言われるものが好きだ。
暇なときはケータイかパソコンをいじってるし、携帯プレイヤーやレコーダーの新機種のチェックは欠かさない。
もっとも、俺の小遣いじゃ買えっこないのだが。
その中で、デジカメだけはあまり興味がなかった。
写真ならケータイで撮れるし、取り立てて撮りたいものがあるわけじゃない。
なので、スルーしていた。
しかし、こうして手元に、黒光りする重厚な物体があると、何か撮ってみたい気持ちになる。
けど…いったい何を?
(とりあえず、明日、学校へ持って行ってみるか)
代わり映えのしない毎日に、変化が生まれた瞬間だった。
このゲームは、2ヶ月後の学園祭で意中の女の子に告白して、成功させることが目的です。